テコンドーと睡眠

テコンドーが上達するためには、「たくさん稽古をすること」が大切です。しかし、どれだけ質の高い稽古を積み重ねても、十分な睡眠が取れていなければ、その効果を十分に発揮することはできません。近年では、睡眠が心身の健康や生産性の向上だけでなく、スポーツのパフォーマンスにも大きく関係していることが、多くの研究で明らかになっています。そして睡眠は、一日だけ意識すればよいものではなく、毎日の生活習慣の積み重ねによって質が大きく左右されます。つまり、日々の睡眠習慣もまた、テコンドーを上達させるための土台の一つと言えるでしょう。今回は、睡眠がテコンドーにもたらす効果と、良質な睡眠を確保するためのポイントについてご紹介します。 🌙コンディションを整えるテコンドーの強い蹴りや素早いステップ、瞬発的な動きの連続によって、筋肉だけでなく神経や関節にも大きな負担がかかります。そのため、稽古で受けたダメージを回復させるには、十分な睡眠が欠かせません。睡眠中、とくに眠り始めの深いノンレム睡眠では、成長ホルモンが多く分泌されます。この成長ホルモンには、損傷した筋肉や組織を修復し、身体をより強く回復させる「超回復」を促す働きがあります。また、睡眠は免疫機能とも深く関係しています。睡眠効率が高い人ほど風邪などの感染症にかかりにくいことが報告されており、反対に睡眠不足は免疫力の低下につながることが分かっています。さらに、スポーツ分野では、睡眠時間が短い選手ほど怪我の発生率が高くなるという研究もあります。継続して稽古に取り組むためには、怪我を防ぎ、健康な身体を維持することが何より重要です。また、十分な睡眠によって脳の疲労が回復することで、稽古中の集中力も高まります。良質な睡眠は、身体だけでなく、最高のコンディションで稽古に臨むための土台を支えてくれます。 🌙技術を定着させる「睡眠は勉強した内容を記憶として定着させる」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。実は、この働きは学習だけではありません。睡眠中には、その日に練習した型(トゥル)や組手(マッソギ)の蹴り技といった運動技能も整理・定着されます。しかし、学習の記憶は睡眠前半の深いノンレム睡眠で定着する一方、運動技能の定着は、睡眠後半の朝方の浅いノンレム睡眠で定着すると言われています。つまり、睡眠時間が短いと、運動機能が定着する睡眠が来る前に起きてしまうことになります。十分な睡眠時間をとることで、稽古で覚えた技術が睡眠中に脳の中で整理され、「知っている技」から「自然に出せる技」へと変わっていくのです。 🌙判断力を高めるテコンドーでは、一瞬の判断が勝敗を左右します。相手との距離を見極める。攻撃するか、防御するかを瞬時に判断する。相手の動きを予測し、最適な技を選択する。こうした判断は、脳が良い状態で働いてこそ可能になります。しかし、睡眠不足になると脳の疲労が十分に回復せず、集中力や判断力が低下します。実際に、睡眠不足では感情をコントロールする前頭前野の働きが低下し、注意力や判断力が鈍くなることが知られています。その結果、スパーリングや試合では反応が遅れたり、本来ならしないようなミスをしてしまったりすることがあります。また、イライラや不安を感じやすくなるため、冷静な試合運びが難しくなることもあります。テコンドーで求められる「瞬時の判断力」は、良質な睡眠によって支えられているのです。 🌙 良質な睡眠を確保するために良質な睡眠を確保するためには、「睡眠時間」と「睡眠の質」の両方が重要です。まず、睡眠時間の目安として、□ 小学生:9~12時間□ 中学生・高校生:8~10時間□ 成人(18~64歳):6~9時間程度が推奨されています。もちろん個人差はありますが、まずは必要な睡眠時間を確保することが第一歩です。そのうえで、睡眠の質を高めることも大切です。例えば、□ 寝室を暗く、静かで快適な温度・湿度に保つ□ 就寝の1~2時間前にぬるめのお風呂に入る□ 就寝直前の食事やカフェインを避ける□ 寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控える□ 毎日できるだけ同じ時間に寝て、同じ時間に起きるといったことは、睡眠の質を高めるために有効とされています。どれも一度は耳にしたことのある内容かもしれません。しかし、重要なのは「知っていること」ではなく、「続けること」です。毎日の習慣を少し見直すだけでも、睡眠の質は大きく変わります。テコンドーの型や組手の動画を見て研究する方もいらっしゃると思いますが、就寝前はほどほどにしましょう。 テコンドーで成果を出し、長く競技を続けていくためには、技術を磨くだけでは十分ではありません。身体を回復させること。技術を定着させること。判断力や集中力を維持すること。そのすべてを支えているのが睡眠です。稽古で努力を積み重ねることはもちろん大切です。しかし、その努力を最大限に成果へとつなげるためには、睡眠もまた「トレーニングの一部」と考える必要があります。毎日の睡眠を少し意識することが、明日の稽古だけでなく、一年後、五年後の自分の成長に繋がっていくでしょう。

テコンドー上達のための食事

テコンドー上達のためには、運動の効果向上や身体づくりのため、食事など摂取する物にも気を遣うと良いでしょう。稽古前の食事、稽古中の栄養・水分補給、稽古後の食事、普段の食事には、それぞれの役割があり、同じものを同じだけ食べればよいというわけではありません。目的意識を持ち、その時々に適切な内容・量を摂れるように心掛けましょう。 稽古前の食事 稽古前の食事は、その日の稽古を最高のものにするために必要なエネルギーを身体に蓄え、コンディションを整えることが目的です。稽古で主にエネルギー源となるのは炭水化物ですので、稽古の1~2時間前までに適量の米や麺類、パンなどを食べましょう。炭水化物(糖質)は太りやすく、なるべく我慢しているという方もいるかもしれませんが、運動中に炭水化物が不足してしまうと、必要なエネルギーを得るために筋肉が分解されてしまいます。無酸素運動では糖質が主なエネルギー源として利用されますので、稽古中に糖質が不足し、たんぱく質が分解され筋肉を減らさないために、事前にエネルギー源としてで適切な量の糖質を摂っておきましょう。また、脂質の多いものは消化に時間がかかるため、運動前は低脂質なものなど消化の良いものを食べましょう。脂質の多いものや気合を入れて量を食べ過ぎてしまうと、稽古中に気持ち悪くなってしまうこともありますので、気を付けましょう。 稽古中の水分補給 運動中は、汗や呼気などから多くの水分が失われます。体重の 2%(例:体重60kgの場合、1.2kg)以上が失われると、集中力や持久性能力の低下など運動パフォーマンスに影響するため、運動前後の体重減少が 2%以内におさまることを目安に、適切に水分補給をしましょう。水分は体内に吸収されるまで 30分程度かかるとされているため、運動開始 30 分前からの補給を心がけます(目安:250~500mL)。運動中は少量ずつ、こまめに補給します(目安:1 時間あたり 3~4 回、1 回あたり 200~300mL 程度)。押上道場でも、稽古中に水分補給の時間を1時間に数回設けていますので、その際にはしっかりと水分補給をするようにしましょう。発汗により水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。お水だけを摂りすぎると、体液中の水分とイオンのバランスが崩れてしまうため、食塩を含んだ飲料が適しています。また、糖質を含んでいると、腸管での水分の吸収効率が高まります。日本スポーツ協会では、塩分 0.1〜0.2%、糖分4〜8%、温度 5~15℃の飲み物を推奨しています。冷たいスポーツドリンクが運動中、運動後の飲み物として適しています。 稽古後の食事 運動直後は、たんぱく質などの栄養素を吸収しやすい状態になっています。たんぱく質は、筋肉中のエネルギー源の回復のピークである運動後45分~1時間以内に補給されているともっとも効率が良いといわれています。そのため、たんぱく質は運動前ではなく、運動後30分以内に摂取することを心がけましょう。運動後は肉や魚がメインのしっかりとした食事を取るのが理想ですが、すぐに食事ができない場合は、まずはプロテインや豆乳、牛乳、ヨーグルトドリンクなどを飲んでおくのも手です。さらに、速やかに糖質を摂取すると、運動で減ってしまった筋グリコーゲンの回復に役立つため、筋タンパク質の分解を抑えられると言われています。また、運動後の体を回復するために続く代謝を助けるため、汗と一緒に流れてしまった、ビタミンやミネラル類を補うことも必要です。特に、糖質や脂質を筋肉や肝臓に蓄えるエネルギーに変える際に必要なビタミンB群や、タンパク質の吸収率を向上させるビタミンCなどを意識して摂るようにするとよりよいでしょう。 普段の食事 日常的に大切なのは、栄養バランスのよい食事です。五大栄養素である炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを偏りなく摂取することが重要です。たんぱく質は体をつくる栄養素の一つであり、体を鍛え始めると筋肉をつけるために多く摂ろうとしてしまいがちですが、過剰摂取には注意が必要です。必要以上にとり過ぎたたんぱく質は窒素となりアンモニアに変わります。体に有害なアンモニアを無害化し、尿として体外に排出するため、肝臓や腎臓に負担をかけてしまいます。逆にたんぱく質が不足してしまうと、筋力や免疫力の低下、肌や髪がカサカサになるといった美容にもよくない効果があります。たんぱく質に限らずどの栄養素についても、不足したり多く摂りすぎると体によくありません。日頃から五大栄養素をバランスよく摂ることを心掛けましょう。 テコンドー上達のために、技術を磨くことが重要であるのは言うまでもありませんが、そのためには、稽古の効果を高める栄養の摂取や、土台となる身体づくりが必要です。上記でご紹介したとおり、稽古がある日は、稽古前に糖質、稽古中に水分補給、稽古後にたんぱく質、糖質、ビタミンミネラル類を摂るようにしましょう。また、普段の食事では、五大栄養素をバランスよく摂りましょう。 摂取したものは、文字通り自分の血となり肉となることを意識し、食べるものやタイミングに気を遣うようにしましょう。You are what you eat!

心と身体をほぐす呼吸法

テコンドーにおいて、技の技術を磨くことやパワーを強くすることはもちろん大切ですが、実は、心身をほぐすことも非常に重要です。心身の緊張を緩和させることで、最大限のパフォーマンスを発揮することができます。テコンドーでは呼吸法を使い、心身をほぐし、状態を整えていきます。呼吸法には、様々なものがあります。「力の理論」における攻撃や防御の効果を増大させる方法(テコンドーの「力の理論」はこちら)もありますが、心身をほぐすための呼吸法もあります。今回は、テコンドーにおいて心身をほぐすことが重要である理由や、そのための呼吸方法についてご紹介します。 ○ テコンドーにおいて心身をほぐすことの重要性 身体をほぐすと、型においては、キレのある美しい動きを生み出すことに役立ち、組手においても、身体を柔らかくし、スピードや威力を高めることができます。心をほぐすと、昇級・昇段審査や試合の際に、緊張して身体が硬くなることを防ぐことができます。身体が硬くなると、スムーズで伸び伸びとした良い動きができず、怪我の原因にもなります。身体がリラックスすると心もリラックスし、心がリラックスすると身体がリラックスするといったように、心身は影響しあっているため、両方の状態を整えることが大切です。テコンドーの呼吸法は、その両方の緊張を緩和させ、状態を整える効果があります。 ○ 呼吸が自律神経に与える効果 日常生活の中でも、深呼吸をして気持ちを落ちつかせる方もいるかもしれません。緊張状態やリラックス状態に影響を及ぼす自律神経は、通常、自分の意志でコントロールできるものではありませんが、唯一の例外が呼吸です。自律神経には、活動時に働く「交感神経」と、休息やリラックスするときに働く「副交感神経」があります。呼吸法には、大別すると胸式呼吸と腹式呼吸があり、胸式呼吸は交感神経を、腹式呼吸は副交感神経を優位にします。胸式呼吸:胸の周りの筋肉を使い、肋骨を広げることにより肺を膨らませる呼吸法です。浅く早い呼吸になるのが特徴で、アドレナリンの分泌を促し、身体をアクティブに動かしたり気持ちを奮い立たせたりする効果があります。腹式呼吸:肺の下にある横隔膜を使って肺を膨らませる呼吸法です。深くゆっくりとした呼吸となるのが特徴で、リラックスをしながら心身を整える効果があります。テコンドーでは、腹式呼吸を使って緊張を緩和し、心身をほぐします。 ○ 腹式呼吸の方法 腹式呼吸はひとことで言うと、下腹部を膨らませたりへこませたりして呼吸をする方法です。息を吸う時に腹部 (腰側も含めて) が膨らみ、吐く時に縮まることが特徴です。 この腹部の膨らみと縮まりは、空気が肺に出入りし膨張・縮小することと連動して横隔膜が上下に動くことによって起こります。決して難しい方法ではなく、一度身につければいつでもどこでも行うことができます。具体的には、以下の手順となります。 せっかくテコンドーの技を習っても、緊張などで最大限の実力を発揮できなければ、もったいないですよね。 正しい呼吸法を覚え、心身の緊張をコントロールできるようになりましょう。 もちろんテコンドー以外の場合でも、腹式呼吸は心身をほぐし、リラックスするのに有効です。 様々な場面で活用し、緊張やストレスの軽減に役立ててください。

テコンドーの稽古と銭湯のお話

押上道場での稽古後には、施設にあるシャワーを使用することも出来ますが、銭湯に行くこともお薦めです。新陳代謝の活発化、リラックス効果など、入浴すること自体にも様々なメリットがありますが、稽古後の入浴により、トレーニング効果を高めることもできます。押上道場周辺には魅力的な銭湯がいくつかありますので、是非行ってみてください。今回は、テコンドーの稽古後に入浴することのメリットや、道場周辺の銭湯をご紹介します。 目次 テコンドーの稽古 テコンドーの稽古では基本動作や型をやりこんだり、ミットをたくさん蹴ったり、全身をダイナミックに使った運動を行います。また、持続的運動を一定時間行う有酸素運動と、強度の高い運動を短時間で行う無酸素運動のそれぞれの要素があり、身体づくりに効果的であると同時に、全身の筋肉が消耗します。厚生労働省が公表する「健康づくりのための身体活動基準」の中でも、テコンドーは強度の高い運動の部類として例示されています。 テコンドーの稽古により全身の筋肉が消耗し、疲労が蓄積されますので、身体のケアも必要です。 入浴のメリット 新陳代謝の活発化、リラックス効果、美容効果、要介護・脳心血管発症リスクの減少など 運動 ✖️ 入浴のメリット ・疲労回復:運動後、30分〜1時間後に入浴することで疲労回復効果が得られます。体温が上昇し、血行が促進されるためです。血液の循環が向上することで、酸素の供給スピードが加速し、疲れの原因となる乳酸をより多く分解してくれます。そして凝り固まった筋肉に柔軟性が生まれ、疲労回復が早まります。・筋肉生成:運動することで筋肉が損傷し、修復する際に肥大化していきます。この時入浴により細胞を温めることで、筋肉生成が促されます。 注意点 場合によっては逆効果となるため、以下に注意して入浴するようにしましょう。 ・入浴前にクールダウンをする:熱いお風呂に入ると、体温を下げるために皮膚に血液が集まり、トレーニングで筋肉にたまった疲労物質を取り除く血液が足りなくなってしまいます。クールダウンによって、疲労物質を運び去る血液を筋肉まで循環させることが大切です。 ストレッチで十分にクールダウンをしてから、入浴するようにしましょう。・水分補給を十分にする:稽古や入浴により、脱水症状が起きやすい状態になっています。水分補給はしっかり行うようにしましょう。・疲労感が増す場合もある:トレーニングの度合いによっては、かえって疲労感が増したり、筋肉に炎症が起きてしまう場合があります。ハードな練習をした後は無理せず、38~40℃のぬるめのお湯に浸かる、長時間の入浴は避けるなど、注意が必要です。 テコンドー押上道場周辺の銭湯 ※2023年11月時点の情報です。 日替わり温泉薬師湯:毎日変わる100種類以上のユニークな薬湯が特徴的です。料金:大人520円、中学生420円、小学生200円、幼児100円、サウナ+200円アクセス:とうきょうスカイツリー駅より徒歩2分、押上道場より徒歩3分URL: http://yakushiyu.com/ さくら湯:商店街の中にあり、下町情緒いっぱいです。料金:大人520円、中学生420円、小学生200円、幼児100円、サウナ+200円アクセス:押上駅より徒歩2分、押上道場より徒歩15分URL: http://sakurayu.jp/ 押上温泉大黒湯:ルーフテラスとギャラリーのある銭湯です。料金:大人520円、中学生420円、小学生200円、幼児100円、サウナ平日+300円・土日祝+330円アクセス:押上駅より徒歩6分、押上道場より徒歩16分URL: https://www.daikokuyu.com/index.html テコンドーの稽古で身体を動かし銭湯で汗を流せば、心も身体もリフレッシュし、良いこと尽くしです。仲間と一緒に行けば、仲も深められるかもしれませんね!