心と身体をほぐす呼吸法

テコンドーにおいて、技の技術を磨くことやパワーを強くすることはもちろん大切ですが、実は、心身をほぐすことも非常に重要です。
心身の緊張を緩和させることで、最大限のパフォーマンスを発揮することができます。
テコンドーでは呼吸法を使い、心身をほぐし、状態を整えていきます。
呼吸法には、様々なものがあります。「力の理論」における攻撃や防御の効果を増大させる方法(テコンドーの「力の理論」はこちら)もありますが、心身をほぐすための呼吸法もあります。
今回は、テコンドーにおいて心身をほぐすことが重要である理由や、そのための呼吸方法についてご紹介します。

○ テコンドーにおいて心身をほぐすことの重要性

身体をほぐすと、型においては、キレのある美しい動きを生み出すことに役立ち、組手においても、身体を柔らかくし、スピードや威力を高めることができます。
心をほぐすと、昇級・昇段審査や試合の際に、緊張して身体が硬くなることを防ぐことができます。
身体が硬くなると、スムーズで伸び伸びとした良い動きができず、怪我の原因にもなります。
身体がリラックスすると心もリラックスし、心がリラックスすると身体がリラックスするといったように、心身は影響しあっているため、両方の状態を整えることが大切です。
テコンドーの呼吸法は、その両方の緊張を緩和させ、状態を整える効果があります。

○ 呼吸が自律神経に与える効果

日常生活の中でも、深呼吸をして気持ちを落ちつかせる方もいるかもしれません。
緊張状態やリラックス状態に影響を及ぼす自律神経は、通常、自分の意志でコントロールできるものではありませんが、唯一の例外が呼吸です。
自律神経には、活動時に働く「交感神経」と、休息やリラックスするときに働く「副交感神経」があります。
呼吸法には、大別すると胸式呼吸と腹式呼吸があり、胸式呼吸は交感神経を、腹式呼吸は副交感神経を優位にします。
胸式呼吸:胸の周りの筋肉を使い、肋骨を広げることにより肺を膨らませる呼吸法です。浅く早い呼吸になるのが特徴で、アドレナリンの分泌を促し、身体をアクティブに動かしたり気持ちを奮い立たせたりする効果があります。
腹式呼吸:肺の下にある横隔膜を使って肺を膨らませる呼吸法です。深くゆっくりとした呼吸となるのが特徴で、リラックスをしながら心身を整える効果があります。
テコンドーでは、腹式呼吸を使って緊張を緩和し、心身をほぐします。

○ 腹式呼吸の方法

腹式呼吸はひとことで言うと、下腹部を膨らませたりへこませたりして呼吸をする方法です。息を吸う時に腹部 (腰側も含めて) が膨らみ、吐く時に縮まることが特徴です。 この腹部の膨らみと縮まりは、空気が肺に出入りし膨張・縮小することと連動して横隔膜が上下に動くことによって起こります。
決して難しい方法ではなく、一度身につければいつでもどこでも行うことができます。
具体的には、以下の手順となります。

  • ① 身体の力を抜いたまま、おへその下あたり(丹田)に手をあて、長くゆっくりと息を吐きます。口をすぼめるようにして息を吐くと、時間をかけて息を吐くことができます。お腹の中の空気を全て吐き切るイメージをしましょう。
  • ② 吐ききって下腹部が限界まで凹んだら、次は下腹部に空気を入れて膨らませるイメージで息を吸っていきます。このとき、できるだけ自然に鼻から空気を吸うのがポイントです。
  • ③ めいいっぱい息を吸いこんだら、3秒ほど少し息を止めて、再び息を吐いていきます。
    以上を5~10分ほど繰り返し行います。呼吸に合わせて身体の緊張がほぐれていくイメージを頭に浮かべながら行うことで、実際のリラックス効果も高まります。


せっかくテコンドーの技を習っても、緊張などで最大限の実力を発揮できなければ、もったいないですよね。 正しい呼吸法を覚え、心身の緊張をコントロールできるようになりましょう。 もちろんテコンドー以外の場合でも、腹式呼吸は心身をほぐし、リラックスするのに有効です。 様々な場面で活用し、緊張やストレスの軽減に役立ててください。