テコンドーと他の武道・格闘技の違い
「テコンドー」と聞いて、どんなスポーツを思い浮かべますか?
柔道のように道着を着て礼を重んじる姿、空手のように構えて突きや蹴りを出す姿、あるいはキックボクシングや総合格闘技のように激しく打ち合うイメージ——人によって想像するものはさまざまかもしれません。
でも実は、テコンドーには、他の武道や格闘技とは違う、独自のスタイルと魅力があります。
今回は、そうした違いや共通点を交えながら、「テコンドーならでは」の特徴をご紹介してみたいと思います。
漢字から見るテコンドーの特徴
テコンドーは、漢字で書くと「跆拳道」。
この漢字が、テコンドーの特徴をよく表しています。
・跆:「踏む・跳ぶ・蹴る」=足技を表します。
・拳:「突く・打つ・受ける」=手技を意味します。
・道:「心の在り方」「礼節を重んじる生き方」を意味する、武道に共通する精神的側面です。
つまりテコンドーは、手足を使って相手に打撃を与える武道でありつつ、礼儀や自己鍛錬を重視する“道”でもあるのです。
これらは、他の競技と共通する点もありますが、テコンドーならではの特徴がいくつかあります。
一番の違いは「多彩で力強い蹴り技」
テコンドー最大の特徴は、何といっても「蹴り中心のスタイル」。
空手にも蹴り技はありますが、テコンドーでは試合でも蹴りが主役になります。上段蹴り、中段蹴り、回し蹴り、跳び蹴り、後ろ回し蹴りなど、バリエーションは非常に多彩で、その多くが華麗な空中動作をともないます。
テコンドーの組手(マッソギ)では、突きより蹴り技の方がポイントが高く、また、上段への攻撃や、空中で回転する蹴りどポイントが高くなるというルールがあります。たとえば、上段(顔)への跳び蹴りや後ろ回し蹴りなどは、得点が高く、試合でも勝負を分ける重要な技とされています。こうしたルールもあって、より難易度の高い技術が重視され、他の武道にはないダイナミックさと戦略性が生まれています。
組手のルールに関する記事はこちら!
▶ たとえば柔道や合気道は「組技」「投げ技」が主体、また、柔術は、「寝技」「関節技」「絞め技」で相手を制する
▶ 剣道は「竹刀による打突」、
▶ 空手は「突き・蹴りの実戦的な間合い重視」。テコンドーも空手と共通する要素があるが、テコンドーではより蹴りの間合いを重視。
▶ キックボクシングは実戦的な打撃を重視。KOや一本勝ちを目的とするため、威力とフィジカルが重要。
▶ ボクシングはパンチのみで勝負する競技。フットワーク、反射神経、スピード、スタミナが問われる。
▶MMA(総合格闘技)は実戦的な打撃と投げ技、関節技を重視。KOや一本勝ちを目的とするため、威力とフィジカルが重要。
▶少林寺拳法は「突き」「蹴り」だけでなく、「投げ」「固め」も含む総合的な動きを特徴とし、護身と自己修養を重視。技術と精神修養が一体になった独自の体系を持つ。
▶日本拳法は、防具をつけた実戦形式で、「突き」「蹴り」「投げ」「寝技」まで含む。競技としても発展しており、実戦性と合理性を両立している。
▶ムエタイはタイの伝統格闘技で、ひじ・ひざを使った強烈な打撃が特徴。接近戦での攻防に長け、首相撲(クリンチ)も多用する。試合ではKOが重視され、打たれ強さや持久力も重要な要素となる
このように、それぞれの武道・格闘技には特徴がありますが、テコンドーはその中でも「蹴り技中心のスタイル」と「華やかで戦略性の高い競技性」が際立っています。
コートの違いもスタイルに影響
競技が行われる場所(=試合コート)も、実はスタイルに影響を与える要素の一つです。
たとえばキックボクシングやボクシング、MMAでは「ロープで囲まれたリング」で試合が行われるため、相手をコーナーに追い詰めたり、ロープを背にして攻防を展開したりと、リング特有の駆け引きが求められます。
一方で、テコンドーの試合はロープのない四角いコートで行われ、広いスペースを自由に動き回れるのが特徴です。そのため、スピード感あふれる回避や飛び技が生きやすく、空間全体を使った立体的な戦い方が主流になります。
「型」のリズムも独特
テコンドーにも「型(トゥル)」がありますが、サインウェーブと呼ばれる上下動のリズムが大きな特徴です。
これは、上下の波のような身体の動きを使って、力を効率的に伝える動作のこと。力強く滑らかな動きを身につけるための工夫で、空手の直線的でキレのある型とはまた違った味わいがあります。
型を通じて、軸の安定や呼吸、目線、タイミングなどを養う点は共通ですが、その表現方法には流派や武道ごとの哲学が表れていて、興味深いところです。
テコンドーもまた「道」である
もちろん、他の武道と同じように、テコンドーも単なる「戦う技術」だけを教えるものではありません。礼儀、正義、忍耐、謙虚さなど、人としての在り方を学ぶ「道」という側面が、何よりも大切にされています。
たとえば、勝ってもおごらず、負けてもくじけない姿勢。相手に対する尊敬。そうした精神的な学びもまた、テコンドーを稽古する中で自然と身についていきます。
テコンドー精神に関する記事はこちら!
テコンドー選手の身体的特徴
テコンドー選手の身体には、競技の特性が色濃く表れています。
華麗な蹴り技を支えるために、股関節が柔らかく、バランス感覚にも優れているのが特徴です。また、跳躍や回転動作を多く行うため、下半身や体幹の筋肉が特に発達しています。
とはいえ、テコンドーはウエイト制の競技でもあるため、筋肉量はありつつもスマートで引き締まった体型の選手が多いです。型やパンチの稽古も多く行うため、上半身の筋力や姿勢の美しさも自然と鍛えられていきます。
テコンドーは、空手や柔道と同じく「武道」であり、キックボクシングやMMAと同じく「格闘技」でありながら、
・蹴り技の比重が高い
・華やかでダイナミックな動きが多い
・サインウェーブを使った型のリズムが独特
・防具を用いたポイント制の組手
・広いスペースを活かした空間的な戦い方
・スマートでしなやかな身体づくり
といった点で、他の競技とは異なる個性を持っています。
見た目が華やかでかっこいいだけでなく、その奥には深い身体のコントロールと心の成長がある。それが、テコンドーの魅力なのです。
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- Date 2025年6月11日
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Category
テコンドー