テコンドーの鍛錬では、思うように技ができない、試合で負ける、昇級審査でうまく力を発揮できない。そんな「失敗」を経験することもあるかもしれません。そんなときには、悔しさや自分への不甲斐なさを感じ、テコンドーを続ける自信を失ってしまうこともあるでしょう。しかし、テコンドーにおいて失敗は、決して恥ずかしいことでも、避けるべきものでもありません。むしろ、次の成長へ進むための大切な機会です。大切なのは、「失敗しないこと」ではなく、失敗した後にどう向き合うかです。今回は、テコンドーにおける「失敗」の価値について考えてみます。 ■失敗は「できないこと」を知る機会テコンドーを始めたばかりの頃から、すべてを完璧にできる人はほとんどいません。失敗を繰り返し、練習を重ねることで、少しずつ技術を身につけていきます。これは、上級者になっても変わりません。軸足がうまく使えない。狙った場所に蹴りが届かない。型の動作を間違えてしまう。こうした失敗は、「今の自分には、ここに課題がある」ということを教えてくれるものです。 試合や昇級・昇段審査も同様です。「負けてしまった」「審査に受からなかった」という結果だけを見て終わってしまえば、その経験を次に活かすことはできません。技術に問題があったのか。体力が足りなかったのか。緊張で普段の動きができなかったのか。その理由を振り返ることで、自分自身の課題が見えてきます。 できないことに気づかなければ、改善することもできません。失敗したからこそ自分の課題が明確になり、次に何を練習すべきなのかが見えてきます。 ■失敗を恐れず挑戦することの大切さ失敗には、もう一つ大きな意味があります。それは、失敗を経験することで「挑戦すること」の大切さを学べることです。失敗したくないと思えば、できることだけを繰り返すようになってしまいます。新しい技に挑戦しない。難しい型に取り組まない。試合に出ることを避ける。これでは、失敗は減るかもしれません。しかし同時に、新しい成長の機会も失ってしまいます。 もちろん、無謀に挑戦すればよいということではありません。現在の自分の力を理解したうえで、少し難しいことに挑戦する。そして、うまくいかなかったときには、その原因を考え、改善し、もう一度挑戦する。その繰り返しによって、自分のできることが少しずつ広がっていきます。 ■「失敗しない人」ではなく「失敗から立ち上がれる人」へテコンドーでは、技術だけでなく、精神面の成長も大切にしています。稽古や試合では、思い通りにならないことが必ずあります。そこで重要なのは、失敗しないことではありません。 失敗したときに、どう向き合うか。負けたときに、どう立ち上がるか。うまくいかないときに、もう一度挑戦できるか。こうした経験を重ねることで、少しずつ精神的な強さも身についていきます。 テコンドーの精神の一つに「百折不屈」があります。何度失敗しても、何度挫折しても、決してくじけず、立ち上がって前へ進むという姿勢です。失敗を経験するからこそ、そこから立ち上がる力を身につけることができます。 ■「失敗できる環境」も大切だからこそ、道場は失敗を恐れずに挑戦できる場所であることが大切だと考えています。大いに挑戦し、大いに失敗してください。もちろん、失敗したことをそのままにするのではありません。なぜうまくいかなかったのかを一緒に考え、どうすれば改善できるのかを指導し、次の挑戦につなげていく。押上道場では、そうした一つひとつの経験を成長につなげられるよう、稽古生の皆さんを支えていきます。そして、稽古生の皆さんにも、互いの挑戦を応援し、失敗した仲間を支え合いながら、ともに切磋琢磨していってほしいと思います。