テコンドーで怪我を防ぐために

スポーツに怪我は付き物ですが、個々のスポーツに起きやすい怪我を把握し、対策することで、怪我の発生リスクを抑えることができます。
テコンドーは、動作の正確性・力強さ・スピード・バランスなど多様な要素が高いレベルで求められることや、組手はライトコンタクト(打撃によるダメージの度合いではなく、技の正確性により得点するルール)であること、蹴り技や上段への攻撃のポイントが高いなどの特徴から、起こりやすい怪我にも特徴があります。
稽古中や試合の際に怪我をしない・させないために、予防のための対策やルール・マナーの遵守を徹底しましょう。

■テコンドーに多い怪我

Jacinta Jonesの論文「Common Taekwon Do Injuries and Potential Preventative Measures」よると、ある研究では、テコンドーにおける怪我は、多い順に、以下のとおりとなっています。
・怪我の部位:①下肢(特に足や足首)、②上肢、③頭部または頚部、④体幹
・怪我の種類:①打撲傷、②骨折、③脳震盪、④捻挫、⑤裂傷
・怪我の発生した状況:①他の競技者との接触によるもの、②非接触によるもの、③オーバーユース(使いすぎ)
また、テコンドーに限らず、どのようなスポーツでも、疲労していると怪我のリスクは大きく高まります。

上記を踏まえ、テコンドーで怪我を防ぐために重要なポイントを、以下の項目でご紹介します。

■日頃のコンディショニング

組手での接触、体勢の変更、反復的な動作などに耐えられる身体を作るため、日頃から身体の基礎能力を高めたり、身体ケアをすることはとても重要です。
稽古や自主トレーニングによって、関節や腱・筋肉を強化したり、日頃からストレッチやマッサージ、アイシングなどで身体のケアをしておくようにしましょう。
テコンドーで負傷の多い下肢に特化した様々な神経筋トレーニングを行うことも効果的です。足関節、膝関節、股関節の安定性が向上し、負傷の可能性が低くなります。
また、十分なウォーミングアップや体調に合わせて稽古することも大切です。

■身の守り方の習得

テコンドーでは接触による怪我が多くなっており、身の守り方を習得することは、怪我を防ぐうえで欠かせません。
テコンドーを含め、武道の基本はまず守りを覚えることからです。相手の動きを追う目を養うことや身のこなしを適切に学ぶことで、多くの怪我は防ぐことができます。
テコンドーはもともと護身術として発達した競技であり、押上テコンドークラブでも身の守り方は主要な稽古内容の1つです。
指導をよく聞き、実践でしっかり使いこなせるようにしましょう。

■適切な防具の着用

同じく接触による怪我を防ぐために非常に重要なのは、組手における防具(グローブ、フットプロテクター、マウスピース等)の着用です。
テコンドーで多い怪我や重篤な怪我を防ぐために作られており、怪我のリスク軽減のために、防具に関する規定の変更も行われてきています。
試合の際は規定どおりに着用し、稽古の際も先生の指示を必ず守るようにしましょう。

■組手の練習時の注意点

特に組手の稽古では、常に集中力を切らさないことが怪我をしないことに繋がります。また先生や先輩の指示に従うことが大切です。
組手を実戦形式で行うスパーリングは、押上テコンドークラブでは以下の種類に分けています。それぞれの目的に合わせて技のスピードやパワーのコントロール、距離感とタイミングを調整することで、怪我を防止します。

・マススパーリング:相手に攻撃を触れさせない練習方法で、相手をよく見て距離感とタイミングを学ぶための練習です。自分の攻撃は相手に当てないようにしましょう。
・ライトスパーリング:名前のとおり攻撃を軽く当てるのみで、ダメージが無いようパワーをコントロールする練習です。距離感とタイミングに加え、コントロールを覚えましょう。自分にとっての「軽い」攻撃ではなく、相手にとっての「軽い」攻撃であることに注意をしてください。相手にとって軽くなければ、怪我の原因になります。
・スパーリング:スピードとインパクトのある攻撃を行う練習方法で、相手のプレッシャーを感じながら攻防を楽しみます。必ず防具を付けて行ってください。

■跳び蹴りや跳躍時の着地

怪我は組手の稽古以外でも起こり得うるものです。テコンドーでは跳び蹴りや跳躍を伴う動作も練習します。その中で多いのは、跳躍から着地する時の足首・膝の捻挫や靱帯損傷です。日頃からジャンプトレーニングによって着地時の衝撃に慣れておくことに加え、衝撃を緩和する正しい着地を習得する必要があります。

■転倒

組手やミット打ちの稽古の中で転倒し、床や壁などに衝突することにより怪我をしてしまうこともあります。特に頭部から転倒した場合は脳震盪などの可能性があります。
転倒しないためにバランス能力を養うことや、万が一転倒した時には大切な部分を守れるよう顎を引き安全に転ぶことも大切です。いずれも稽古で教わりますので、しっかりと身に付けてください。

テコンドーにおける怪我のリスクは、性別や年代によっても変わってきますが、今回ご紹介した内容は、基本的に誰にとっても効果的であり、稽古生全員に守っていただきたいこととなります。
特に大きな怪我は回復に時間がかかり、その間に稽古ができなかったり試合に出場できないのはもちろんのこと、日常生活にも支障をきたします。
また、小さな怪我でもクセになることがありますので、さらに怪我のリスクが高まります。
自分も相手も怪我をしない・させないことを意識し、道場全体で守っていきましょう。