身体知を信じる力 フィールド・フローのスポーツメンタルコーチング

テコンドーを含め、スポーツの上達のためには、技術の向上だけでなく、心のコントロールも重要になります。そこで、選手が最高のパフォーマンスを出せるよう、心の面で選手を支える「メンタルコーチング」という手法があります。山上先生は、スポーツ指導者の勉強会で「一般社団法人フィールド・フロー」の柘植 晴永代表理事と知り合ってから、メンタルコーチングについて知り、そのサポートについても体験してきました。大会のイメージトレーニングや心の持ち方に良い影響があったそうで、今でも、定期的にメンタルコーチングに関するイベントの企画・運営を共に行っています。今回、その柘植 晴永代表理事に、フィールド・フローのスポーツメンタルコーチングに関する取り組みについてご紹介いただきました。テコンドーでより高いレベルを目指すうえで、メンタルコーチングを受けることは有効な選択肢の一つとなるはずです。ぜひ参考にしてみてください。 以下は柘植 晴永代表理事からのメッセージです。ーーーーーーーーーー身体知を信じる力 フィールド・フローのスポーツメンタルコーチング スポーツにおける「上手くなる」「強くなる」という目標は、単に技術や体力を高めることだけで達成されるものではありません。選手一人ひとりの内面、すなわち「心の状態」や「意識のあり方」、さらには「感覚の鋭さ」もまた、パフォーマンスを左右する大切な要素です。 数あるコーチング手法の中でも、フィールド・フローのスポーツメンタルコーチングが大切にしているのは、「身体知」という、まさにスポーツの現場に根ざした感覚を大事にしています。これは、言葉で表現される以前の、身体が覚えている知恵や感覚、つまり五感や直感、経験に基づいた「気づき」の力を指します。 ◾️五感に働きかけるアプローチ 私たちのコーチングは、選手自身が持つその「身体知」に、丁寧にアプローチしていくことから始まります。たとえば、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった五感を刺激するワークを通して、普段は意識にのぼらないような微細な感覚や感情を引き出していきます。 これにより、選手自身がまだ言葉にできていない想いや、忘れていた大切な感覚に「気づく」ことがあります。ある体験者は「埋没していたアイデアが浮かび上がってきた」と表現してくれました。 ◾️探求の旅に寄り添う スポーツの世界では、日々の鍛錬やルーティンが当たり前のように積み重ねられます。しかし、常に同じ視点・同じ方法では、見えてこないものもあります。だからこそ、あえていつもとは異なる角度や刺激から自分自身を見つめ直す時間が、選手の成長にとってとても大切なのです。 私たちは、「答えは選手の中にある」という信念のもと、無理に何かを教え込むのではなく、選手自身が自分の内側にある答えを見つけていけるように寄り添います。問いかけ、待ち、共に考える。そのプロセスを通じて、選手は自分自身の可能性を深く探求し、より納得のいく形で「自分自身の競技」に向き合っていけるようになります。 ◾️チーム全体へのアプローチ また、個々の選手だけでなく、チーム全体へのコーチングサポートも行っています。スポーツは個人競技であっても、必ず誰かとの関わりの中で成り立っています。ましてや団体競技であれば、チームの雰囲気、コミュニケーション、信頼関係、一体感は、勝敗に大きく影響を及ぼします。 そのため、チームとしての価値観を共有するワークや、相互理解を深める対話の場を設けたり、小グループでのファシリテーションを通じて、チーム全体の関係性を育んでいきます。互いの声に耳を傾け、想いを語り合うことは、戦術以上に大きな力を生むことがあります。それは、勝つための組織ではなく、一人ひとりが尊重され、生き生きとしたエネルギーを持つチームへと育っていく礎となるのです。 ◾️今よりもっと、自分らしく強くなるために スポーツは、自分の限界を超えていく挑戦であり、自分自身との対話でもあります。フィールド・フローのスポーツメンタルコーチングは、選手が「今よりもっと上手くなりたい」「もっと強くなりたい」という思いを、内側から支え、後押ししていく存在です。 無理に自分を変えるのではなく、本来持っている力や感覚を思い出し、磨き直し、自信を持って発揮できるようにする。 私たちは、選手一人ひとりの物語に深く関わりながら、その人らしい輝きがフィールドの上で花開く瞬間を、心から応援しています。

テコンドー精神

テコンドーは技術的に優れた武道ですが、倫理や道徳など、精神性も重視しています。テコンドーを創設した崔泓熙総裁は、テコンドーを修練するに当たり実践すべき要素として、テコンドーの5つの精神を掲げました。崔泓熙総裁が記した「テコンドー百科事典」 (Encyclopedia of Taekwon-Do) に詳細が説明されていますので、以下にご紹介します。稽古生はよく理解し、試合や稽古中はもちろん、普段の生活の中でも当たり前に実践できるようになりましょう。 テコンドー精神 テコンドーの修練が成功するかどうかは、以下の5つから成るテコンドー精神をいかに守り実践するかに大きく左右されます。この精神は、テコンドーを学ぶ全修練生にとっての指針となります。 1.礼儀2.廉恥3.忍耐4.克己5.百折不屈 1.禮義 (礼儀):COURTESY 礼儀とは、調和のとれた社会を維持しながら人間を啓発する手段として、古代の聖人君子たちによって定められた不文律であると言えます。それはさらに、人間に求められる究極の基準であるとも言えます。全修練生は、高貴な人格を形成し、秩序ある稽古を行うために、次の事項の実践に努めなければなりません。1)互いに譲り合う精神を養うこと2)自身の悪事を恥じ、他人の悪事を軽蔑すること3)互いに丁寧な態度で接すること4)人道主義と正義感を奨励すること5)先生と生徒、先輩と後輩、年長者と若年者の関係を明確にすること6)礼儀作法に従うこと7)他人の所有物を尊重すること8)公正かつ誠実に物事を処理すること9)目的の曖昧な贈り物は授受を慎むこと 2.廉耻 (廉恥):INTEGRITY 正と誤をわきまえ、万が一にも過ちを犯した時はたとえ目下の人の前でも自らを恥じることの出来る良心を言います。例えば 、廉恥が欠けている例として、以下があります。1)教える実力もないのに、あたかも権威のある師範の如く振る舞い、善良な修練生達を間違った道に引き入れても恥を感じないこと2)演武を行う際、試割板やブロックに細工をし、実際より技の威力があるかのように見せかけること3)指導者が道場を必要以上に贅を尽くしたり、事務室を虚偽の賞状や優勝カップなどで装飾したり、嘘を並べて媚びることで修練生の関心を得る等、己の無能をごまかすこと4)己の実力以上の段、級位を要求したり、金銭で買収しようとしたりすること5)利己的な目的や偽りの力を誇示するため、段、級位を得ること6)営利を目的として指導や道場の運営を行うこと7)言葉と行動が伴わず約束を守らないこと8)後輩に技術的な意見を聞くことを、恥に感じる先輩9)個人の営利のため権力に追従し、武道家としての基本を忘れ、なおも武道家然とすること 3.忍耐:PERSEVERANCE 「耐えることは徳であり、また、百度耐えれば家庭が平和となる」という諺に見られるように、確かに耐える者には幸福と繁栄が訪れます。高段位、または完璧な技術の習得など、ある目的を達成するためには、目標に向かって絶えず忍耐しなければなりません。忍耐による成功の例として、14世紀のスコットランド王ロバート・ブルースの逸話があります。彼は、負け戦が続き自暴自棄に陥った時、小さな蜘蛛が樹木に巣を張るのに7度も失敗し、8度目についに成功するのを目にしました。そこから再び勇気を得て、彼は戦を続け、スコットランドを解放することができたのです。テコンドーの指導者となるには、あらゆる困難に耐え、克服することが非常に重要な秘訣です。孔子は、「小忍びざれば則ち大謀を乱る」(些細なことを我慢できなければ大きなことは成し遂げられない)と言いました。 4.克己:SELF CONTROL 道場の内外を問わず、自身を抑制することは非常に重要です。例えば、チャユ・マッソギ(自由組手)で自制心を失えば、自分にも相手にも大惨事を招くことになります。また、自分の能力や範囲内で生活や仕事ができないのも、自制心が欠如した例です。老子は、「自ら勝つ者は強し」(強者とは、他者ではなく自分自身に勝つ者である)と言いました。 5.百折不屈:INDOMITABLE SPIRIT 百折不屈は、勇気ある人物の信条が圧倒的不利な状況に直面したときに示されるものです。その例は、紀元前480年のテルモピュライの戦いにおけるスパルタ王レオニダスと300名の兵士に見ることができます。レオニダス王は、ペルシャの大軍に対し、数で圧倒的に不利な状況でありながらも勇敢さと強固な意志を持ち、少しも屈したり怯えることなく最後まで勇戦奮闘しました。真のテコンドー人は、いかなる時も謙虚で正直です。不正に直面したとしても、誰であろうと、何人であろうと、恐れもためらいもなく、好戦的な相手に立ち向かうのです。孔子は、「不正に対して声を上げないのは臆病である」と言いました。歴史が証明しているように、百折不屈の精神でひたむきに夢を追い求めた者が、その目標を達成できなかったことはないのです。 今回は、テコンドー精神についてご紹介しました。 肉体と精神は切っても切れない関係であり、技術や体力だけを追い求めるのではなく、精神も磨き凛とした強さを身につけましょう。 テコンドーの帯を締めるにふさわしい道徳心を身に付けられるよう、上記5つを実践していきましょう。